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【コラム】外国人を雇用した場合の課税関係について その2

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【コラム】外国人を雇用した場合の課税関係について その1
からの続きになります。

海外から研修生を受け入れる場合

一般的に租税条約では、租税条約の相手国から、文化面・教育面における国際交流促進の目的で一定期間自国に来た学生・事業修習者等が受け取る給付・所得は、当該所得の源泉地がどこであろうと免税とすることが多いです。これは、ビジネス目的で来た者と教育を受けに来た者とでは滞在目的が異なるため、両者が受ける所得についても課税のあり方に差を設ける趣旨です。つまり、海外から日本に来た研修生等が日本で受け取る給付については、日本側で課税は行いません。

例えば、日中租税条約では、
「もっぱら教育もしくは訓練を受けるため又は特別の技術的経験を習得するため一方の締約国内に滞在する学生、事業修習者又は研修員であって、現に他方の締約国の居住者であるもの又はその滞在の直前に他方の締約国の居住者であったものがその生計、教育又は訓練のために受け取る給付又は所得については、当該一方の締約国の租税を免除する」
と書かれています。

つまり、文化・教育面での研修生とは異なり、事業における訓練を受けるために日本に滞在する中国からの「事業修習者」が、その生計、教育、又は訓練のため受領する給付については日本では課税されません。ここで問題となるのが、「事業修習者」とはどのような者を指し、「生計、教育又は訓練のために受け取る給付」はどのような内容の給付かということです。

日中租税条約の中では「事業修習者」という言葉の定義はなされていませんが、国税庁のホームページでは「事業修習者」の定義として、「企業内の見習研修者や日本の職業訓練所等において訓練、研修を受ける者」とあります。また、同ページには類似の言葉として「事業習得者」があり、これについては「企業の使用人として又は契約に基づき、当該企業以外の者から高度な職業上の経験を習得する者」と定義されています。免税規定を適用する上では、両者の区分を明確に区別することが非常に重要です。なぜなら、「事業修習者」の場合は企業が支払った給付は免税となる一方で、「事業習得者」となれば課税となるからです。「事業修習者」は、職業上又は事業上の知識又は技能をほとんど有しない見習研修生と解釈するのが妥当で、例えば中国にある子会社の現地社員を日本本社に派遣し、高度な職業上の経験を習得するために滞在させる場合は「事業習得者」に該当し、租税条約上の免税規定を満たしません。

次に、この研修生が「事業修習者」に該当する場合、当該「事業修習者」への給付が「生計、教育又は訓練のために受け取る給付又は所得」に該当するかどうかが問題となります。日中租税条約では給付金の限度額が設けられていませんが、その妥当性については検討する必要があります。一般に「生計、教育又は訓練のために受け取る給付」は、役務の提供の対価としての給与や報酬は該当せず、そのため、職場での訓練等による給付の場合には、役務の提供の対価部分と生計、教育又は訓練のための給付を明瞭に区分しなければなりません。このとき、生計、教育又は訓練のために通常必要な費用の額を超えることは当然許されません。

つまり、給与は一般的に生計維持の部分と職務内容によって支払われる部分から構成されますが、租税条約で免除されるのはあくまで生計維持のために支払われる部分のみとなります。生計費と認められる部分を算定する方法としては、「購買力補償方式」が一般的です。「購買力補償方式」は、3 年や 5 年などの一定期間を海外で勤務後に本国へ帰ることを前提とし、「本国での生計費を派遣先でも補償する」という考えに基づき、本国に勤務していた場合には支給されるはずの給与の中で、生計費として消費される部分については、本国と同等の購買力を補償することにより、’No Loss,No Gain’(海外派遣することによって損もしなければ得もしない)に当たる給与を決定します。そして、それ以外の部分については、各企業の方針によって海外の特殊性という観点から支給される、現地での住宅補助、海外勤務奨励給(インセンティブ)や生活環境差(ハードシップ)手当といった部分を別途明確に区別します。

免税規定の適用手続き

外国人労働者が「事業修習者」に該当し、かつ、その受け取る給付が「生計の維持」に必要で租税条約の免税規定を受けられるものだとしても、自動的に免税規定が適用されるわけではなく「租税条約に関する届出書」を源泉徴収義務者である会社を通じて、最初の給与支払いが行われる前日までに所轄税務署長に提出しなければなりません。この届出が行われていない場合は、日本において租税条約の適用を受けることができず、通常の源泉税の税率に基づいて源泉徴収が行われます。

しかしながら、租税条約に関する届出書は、その実効性を担保するために、届出書を後日提出しても遡及して適用を受けることができます。この場合、国内源泉税率と租税条約に基づく源泉税率との差額については還付請求を行うことが可能で、その際には「租税条約に関する源泉徴収税額の還付請求書」を提出します。

「租税条約に関する届出書」などの書式のダウンロードなどは・・・
国税庁ホームページ・源泉所得税(租税条約等)関係 をご覧ください
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/joyaku/mokuji2.htm

まとめ

租税条約とは、正式には「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国と○○国との間の条約(協定)」といい、国際的な二重課税の排除及び国際的な課税関係の明確化による各国間の経済文化の交流の促進等を目的としています。

今後、ビジネスのグローバル化に伴い、国家間の人的交流がますます増大することが予想されますので、企業は租税条約の内容について十分に理解し、二重に納税することのないよう注意すべきでしょう。

一般社団法人日本インターンシップ支援協会とは

当協会では、労働法や税金関係などの法律を遵守し、将来のある海外の学生たち(中国・韓国・台湾・タイ・ベトナム・モンゴルなど)を支援しています。

また日本につきましては、昨今の人材不足に悩まれる企業に向けて、将来の人材確保に繋がるようにお役にたてればと、活動しています。

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